HOME > 相続クーデター(乗っ取り)の一例

相続クーデター(乗っ取り)の一例

相続に端を発した乗っ取り(クーデター)は現実に発生します。決して対岸の火事ではありません。一見すると普通と思えるような会社で相続クーデター(乗っ取り)は発生します。ここでは、具体的な例を挙げて、どのような場合に相続クーデター(乗っ取り)が行われるのかメカニズム説明してみたいと思います。

ある会社の株主構成は下記の通りです。なおこの会社は非公開会社であり、一般的なオーナー型企業(創業者のいる企業)の形態です。

このように社長・社長夫人(創業者)において全体の67%(3分の2以上)を有しています。この持株比率であれば、会社の重要な決定を行うことができます。合併・事業譲渡などを決定するには株主総会において3分の2以上の賛成が必要です。専務・常務が異議・異論がつたとしても、社長・社長夫人の決定において押し切ることが可能となります。 ここでのポイントは、創業者以外の方が株式を保有していることです。第三者(創業者以外)の持株比率は大きな問題ではありません。

このような状況で、社長が亡くなったとします。子供などが居ないとすれば、社長夫人が社長の持株(50%)を相続することになります。社長夫人の全体の持株比率は67%となります。全体としては3分の2以上を有しています。

一見すれば、大多数を有していることから乗っ取られる可能性が無いとおもわれがちです。ところがここに落とし穴があります。この会社は、非公開会社です。定款において相続人に対する株式の売り渡し請求規定が定められています。なお、多くの非公開会社において同様の定款規定が盛り込まれています。市販されているモデル定款などにも殆どこの規定が記載されています。

これで乗っ取りができる条件が全て整っています。専務又は常務が株主総会を招集します。 この株主総会において、専務又は常務が定款の規定に従い、相続人に対して株式の買取り請求を行います。この場合は社長夫人が相続人です。相続人に対する売り渡し請求の決定については、相続人は議決権を行使することができません。

すなわち、社長夫人は売り渡し請求について賛否を議決することができません。大多数を保有していても、議決に参加することができません。有効となるのは、専務及び常務の持分のみと言うことになります。専務及び常務が賛成すれば、社長夫人の持株の全てを会社が買取ることになります。これにより67%保有していたはずの社長夫人の持株は0%となってしまいます。乗っ取り(クーデター)が成功した瞬間です。

ただ、社長夫人が相続したのは、社長の持分(50%)のみであり、17%は保有していました。ここで問題となるのは、相続した持分のみ議決権が無いのか・相続分も含めた全体について議決権が無いのかということです。会社法に直接の規定は無いので解釈によることになります。一般的には、相続分も含めた全体につい議決権が無いと解されています。今回の例では、67%全部の議決権が無い。

このように多数の株式を保有しているからこそ起きてしいます。ただ、全く防衛する方法が無いわけではありません。事前にいくつかの防衛策を導入することで防ぐことが可能となります。平時において導入できる者であり、実際に相続が発生した場合(有事)には防衛することは相当困難となります。

創業者が全ての株式を保有している場合で、相続人が2人以上存在すれば、同じような乗っ取りが行われる危険が潜んでいます。M&Aの世界は時に非情です。平時にしっかりと将来を見据えた対策を講じる必要があります。

兄弟間における争い

同族会社で、兄弟がいる場合は、後継者争いにおいて、クーデターが生じる可能性があります。内部クーデターです。双方が株式を保有している場合において、相続によって持株比率が変動すると支配権が変動する可能性があります。

また、後継者が決定している場合で、その後継者に株式が集中できない場合に、多額の相続費用が必要となる可能性があります。クーデターまで発展しなくとも、スムーズな経営承継(事業承継)ができない事案もあります。

名義株が存在する場合、少数株主が存する場合は更に複雑になります。相続クーデターを防止するには、状況把握及び対策が必要です。特に同族会社、社長の家族で100%保有している場合、対策は必須です。

結びに変えて

富山綜合法務事務所の富山洋一は、大学・大学院において会社法をひたすら研究しました。また、ビジネス法務・企業戦略法務を得意とし、買収防衛策の提案・導入するための手法を助言しています。

このページの例でも示したように、突然乗っ取りなどは起こります。特定の後継者がいる場合にスムーズに承継を行うには、事前の準備が不可欠です。クーデター(乗っ取り)防衛策を事前に導入する場合にも時間が必要となります。少しずつ時間を掛けて万全な対策を施す必要があるのは言うまでもありません。

事業承継・相続クーデター(乗っ取り)を阻止したい・自分の会社でも起こるかもしれないと思われた方は、まずお問合せください。状況に応じた方法をご提案いたします。

↑上へ